遺産分割協議が必要なのですか?


質問
先月、父親が亡くなりました。父親の相続人は、私と母と妹の3人です。父親はそれなりに財産を残してくれたのですが、遺言は特にありませんでした。嫁に行った妹の夫と母とが折り合いが悪いこともあり、遺産分割協議はうまく進んでいません。ところで、私の住んでいる家を急きょ修繕することになりました。しかし、私の家計状況も余裕がなく、修繕に必要な資金をすぐに作ることができません。そこで、私の法定相続分に限って父親の預金を下ろそうと銀行に行きました。しかし、銀行は、遺産分割協議が終わっていないからという理由で、父親の預金の払い戻しに応じてくれません。銀行預金について法廷相続分の範囲であれば遺産分割協議がはいらないと聞いたのですが、遺産分割協議が終わらない限り、預金を引き出すことはできないのでしょうか?
 

回答
判例の見解とは矛盾していますが、現在の銀行実務では、遺産分割協議が成立するか、裁判で勝訴判決を得るか、又は引き出しに関する相続人の全員の同意書を取ることが出来た場合でなければ、預金を引き出すことはできなくなっています。
 

●判例

預金については、相続開始と同時に法定相続分の割合で分割されるとするのが確定した判例(最判昭和29年4月8日)です。

したがって、遺産分割協議前であっても、法定相続分の限度で預金を引き出せることになります。近時、遺産分割協議が成立する可能性がある場合には金融機関は預金の引出しを拒めるとの判断をしている裁判例もありますが、銀行に対して裁判をした場合、質問者の方の主張が通る可能性は高いと考えます。

●金融機関実務

しかしながら、亡くなった方の預金を引き出す場合、判決や遺産分割協議書、相続人全員の同意書を要求するのが現在の標準的な金融機関実務と言わざるを得ません。遺産分割問題に金融機関が巻き込まれてしまうのを避けるためです。

●定額郵便貯金

平成19年10月1日以前に預け入れた郵便局の定額郵便貯金については、判例(最判平成22年10月8日)も、遺産分割協議が成立しない限り、法定相続分の割合で分割されるわけではないとして、遺産分割協議成立前の引出しを認めていません。これは、定額郵便貯金については、郵便貯金法7条1項3号という法律(現在では廃止されています)の条文が特別な取扱いを定めていたためです。


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